初夏の候とは一体何なのでしょうか?時期は何月のいつからいつまでで、季語や花、食材は何があるのかについて取り上げていきたいと思います。
5月。初夏の候、やわらかな新緑の美しい季節になってきました。晴れた昼間は、強い日差しに夏の気配を感じるほど暖かい日が続きます。花粉も落ち着き、梅雨や激しい暑さの訪れる前の、穏やかなこの時期が大好きです。
個人的に、現在私の住んでいる京都では、春は桜見物の客で溢れ、秋は紅葉見物の客でごった返し、とにかくどこに行っても混雑しています。さらに夏は蒸し暑く、冬はとことん底冷えする盆地気候のため、ゆっくりのんびり観光を楽しむならまさに、今の季節が一年で一番のオススメです!
ところで、何気なく「初夏の候」といいますが、「初夏」って具体的にはいつからいつまでを指すのでしょう?
初夏はいつからいつまでを指すの?
そもそも、何気なく5月頃を指して使っている「初夏」という言葉は、どのような意味なのでしょうか?
四季は、旧暦での正月、つまり節分の日からかぞえて三ヶ月ごとに、春、夏、秋、冬に分けられています。
※以下、()内は旧暦で示しています。
春…初春(正月) 仲春(二月) 晩春(三月)
夏…初夏(四月) 仲夏(五月) 晩夏(六月)
秋…初秋(七月) 仲秋(八月) 晩秋(九月)
冬…初冬(十月) 仲冬(十一月) 晩冬(十二月)
つまり初夏は、夏にあたる四・五・六月のうち、四月、つまり現在の暦でいうと五月頃にあたります。また、古代中国では、太陽の運行をもとに、一年を24等分し、それぞれにその季節の様子を具体的にあらわす名が付けられた二十四節気(にじゅうしせっき)が取り入れられました。古代より、農業で生活していた人々にとって、こうした季節の情報はとても重要なものだったのです。
この表を見ると、二十四節気で初夏にあたるのは、立夏と小満です。2014年の日付でいうと、「5月5日の立夏から、6月6日の芒種の前日までが初夏」ということになります。
この二十四節気、現在のわたしたちには一見馴染みがあまりないように感じられます。けれども、例えば「啓蟄」は、春になって暖かくなり、虫が地面から顔を出す時期をあらわしています。「小満」は、暖かい陽気に、草木が地を満たすように次第に生い茂ってくる時期のこと。「芒種」は芒(のぎ、穀物の実の先に生えている毛のこと)のある麦や米などの穀物を種まき、田植えをする時期をあらわしています。
季節によって移り変わる自然の様子を、なかなか情感豊かに伝えてくれると思いませんか?
初夏をあらわす季語は?
このように、暦を意識してみるだけでも、普段見過ごしていた景色に目を留めるきっかけになったりします。ところで、初夏の季語には、どんなものがあるのでしょうか?
植物でいえば、若葉、菖蒲、牡丹、麦、卯の花、芥子の花、カーネーション、杏など。
食べ物でいうなら、初鰹、豌豆(えんどう、グリーンピース)、蚕豆(そら豆)、新じゃがなどなど。
おなかがすいてきました。
初夏を詠んだ句をいくつかご紹介します。
「目には青葉山時鳥初鰹」 山口素堂
きっと誰もがどこかで耳にしたことのある、よく知られた初夏の句。目の前には一面の若葉、耳にはホトトギスの声、さらに口には美味なる初鰹!作者は松尾芭蕉と交友のあった俳人・山口素堂です。
「ぼうたんの百のゆるるは湯のやうに」 森澄男
牡丹園を眺めているところでしょうか。やわらかい初夏の風に、波のさざなみのように牡丹が揺れる情景が浮かんできて、「湯のように」という比喩が心地よいです。
「杏あまさうな人は睡(ねむ)さうな」 室生犀星
やわらかく熟した杏の食感が伝わります。甘く心地よいまどろみに誘われそうです。
初夏の句で、個人的に好きなものを挙げてみましたが、いかがでしょうか。初夏の陽気の中、なんだかうっとりと眠くなってきました…。
初夏が旬の食べ物は?
さて、初夏に旬を迎える食材には、どんなものがあるでしょう?
例えば・・・ふきのとう、うど、たけのこ、新じゃが、さやえんどう、えんどう豆、そら豆などが挙げられます。
ちなみに、毎年春には、実家裏手にある山に入って、タケノコやふきのとう、山菜などの山の幸を、父が収穫してきます。今年も実家から送られてきました、「ふきのとう味噌」。これがまた、ものすごく!苦いのです。日本酒がすすみます。
こうした、ふきのとうやたらの芽、ウドなどの山菜は、えぐみ、アクがとても強く、苦いですよね。こうした野菜たちが苦いのは、実は毒素の排出を促す働きがあるそうです。冬の間、土の中で栄養を蓄えていた植物たちが一斉に芽吹きます。
また、私たち人間の体も同様に、冬仕様の「溜め込み型」から、冬の間溜め込んだ毒素を体の外に排出しようと、吹き出物が出てしまうことも…。そのため、アクの強いこれらの食材をとることで、肝臓の働きを助けて、毒素が排出されやすくなるのだそう。ぜひ積極的に取り入れたいですね。
忙しい日々を過ごしていると忘れがちですが、ほんの少し暦を意識したり、旬の食材を取り入れてみたりして、今しか味わうことのない季節を感じてみましょう!