マーガリンには、トランス脂肪酸が含まれていて、
実は有害で危険なプラスチックということ、
一度は聞いたことがあるかもしれません。
それは嘘なのか本当なのか、
また、バターとの違いは何なのでしょうか?
(販売禁止や健康被害について。)
詳しく取り上げていきたいと思います。
「マーガリンは有害で危険なプラスチック食品」って嘘?
先日、久しぶりに実家に帰ったある日の朝食。
トーストに塗ろうと、いつものマーガリンを探して
冷蔵庫を開けると、入っていたのはバターでした。
珍しいと思い母親に尋ねると、
「マーガリンは体によくないって聞いたから、
ちょっと高いけどバターを買うようにしたのよ!」
とのこと。
「マーガリンはゴキブリも食べないような、
プラスチックと同じ成分らしいのよ!」
バターよりもやわらかく塗りやすく、
お値段も手頃なため、日頃お世話になっているマーガリン。
本当に「有害で危険なプラスチック」なのでしょうか?
安いからって、このまま毎日食べ続けても大丈夫なのでしょうか?
- そもそもマーガリンって、どのような食品??
もともと、マーガリンは高価なバターの代用品として作られた加工食品でした。
牛乳を主成分とするバターとは異なり、植物性油脂、
あるいは動物性油脂に加工乳などを加えて、練り合わせて作られます。
特徴としては、以下の三つが挙げられます。
まず、バターよりもやわらかくなめらかで、
パンに塗りやすく食品に練り込みやすいということ。
次に、価格がバターのおよそ半額ほどで手頃であること。
最後に、チョコレートやガーリックなど
風味をつけたものなど、消費者の嗜好にあわせた
幅広い製品がつくられているということ。
- どうして「マーガリンは有害」なのか?
液体状の油脂に水素を添加することで半固形化させ、
マーガリンは作られます。
その過程でトランス脂肪酸という物質が生じるのですが、
近年、このマーガリンに多く含まれるトランス脂肪酸が
健康被害の要因になることが指摘されています。
一定量以上を摂取すると、悪玉コレステロールを増加させ、
心臓病のリスクを高めるとされています。
2003年、WTOのレポートによって、
最大でも、一日あたりの摂取エネルギー量の1%未満と勧告されました。
アメリカでは、2006年以降、
加工食品や一部の栄養補助食品のトランス脂肪酸の
含有量の規定を定め、含有量の表示が義務づけられています。
またヨーロッパにおいては、デンマークでは、
食品の含むトランス脂肪酸の量を全脂質の2%未満
とするよう法で定められ、
オーストリア、アイスランドなどでも同様に規定が定められています。
- トランス脂肪酸、摂り過ぎてない?
アメリカ人のトランス脂肪酸の一日の平均摂取量は5.8g。
摂取エネルギー全体からみるとその比率は2.6%。
これはWHOの勧告値である1%を超えています。
前述のとおり、アメリカでは食品への
トランス脂肪酸の量の表示は義務化されています。
一方日本人では、トランス脂肪酸の一日の平気摂取量は1.561g。
摂取エネルギー全体からみるとその比率は0.7%で、
1%未満という勧告値を下回っています。
摂取量からみて、パンに塗ったり料理に使ったりする分には、
健康に被害を及ぼすほどの値ではなさそうです。
- 「マーガリンはプラスチックと同じ成分」って本当?
マーガリンは、前述のとおり、
製造の際に水素を添加することで半固形化します。
けれども、マーガリンがプラスチック、
すなわち合成樹脂である、というのはいささか乱暴な説のようです。
「マーガリンはプラスチック」という説は、
1960年代頃、アメリアの自然運動家フレッド・ローによる
マーガリンの実験が根拠といわれています。
マーガリンを屋外へ2年間放置し、
腐らず虫がよりつかなかったことから、
マーガリンはプラスチック食品という主張が生まれました。
しかし、マーガリンに含まれる脂肪酸と合成樹脂であるプラスチックとは、
分子の大きさや形状の規模が大きく異なります。
構造的にも性質的にも、別の物質といえるのです。
「オイルをプラスチック化」するというのは、
「融点の低い不飽和脂肪酸に水素を加えることで、
融点の高い飽和脂肪酸に変化させて半固形化させる」
ことをやや乱暴に表現した言葉、とみられるのです。
結論としては、以下の三点が挙げられます。
まず、「マーガリンはプラスチック」は極端な表現で、
科学的には誤った表現であるということ。
次に、通常、トーストに塗って食べたり、
炒め物に使ったりするほどの量では健康的に問題がないということ。
最後に、トランス脂肪酸摂取量が勧告値を
オーバーするとしたら、そもそも脂質をとり過ぎている。
マーガリンの摂り過ぎよりも、
脂肪摂取量全体を減らすよう努力すべきということ。
といったところでしょう。
マーガリンにせよバターにせよ、
油・脂肪の摂り過ぎには注意して、
バランスのよい食事を心がけましょう。